ウロコインコの種類(続き)
前回までの記事ではウロコインコの種類としてウロコメキシコインコ属のインコの種類をご紹介しました。
今回はその中でもっともメジャーで色変わりの多い、ホオミドリウロコインコに絞っていろいろな色変わりをご紹介します。
ノーマル
まずはノーマル、野生と同じ原色のご紹介です。
深みのある濃いグリーンの体、頬は緑色で耳の辺りは白いパッチがあります。
頭は黒っぽく首回りは黄色がかったウロコ模様、お腹には赤い部分もあり、尾は茶色っぽい赤です。
ショップでは4万円前後で販売されています。
↑こちらの動画に登場するカイゴロウ君がノーマル色です。少し長めの動画ですが、ウロコインコのおもしろい特徴がわかりますね。
ワキコガネ(イエローサイド)
ワキコガネウロコインコという名前で販売されています。ショップでは4万円前後のようです。
特徴はいわゆる脇の部分、鳥で言うとお腹の両端部分のことを指しているのだと思いますが、そこがコガネイロ(黄金色)だからワキコガネです。
お腹の両端が黄色く、お腹は赤い部分が多いことから、ノーマルに比べるとかなりカラフルなイメージがあります。
ワキコガネという色変わりを発現するのはイエローサイドという遺伝因子で、伴性潜性遺伝(伴性劣性遺伝)です。この因子は黄色と赤の色素沈着を増加させるとのこと。
詳細はそのうち別の記事にしたいと思いますが、インコの染色体は雄(♂)がXX、雌(♀)がYXです。伴性潜性遺伝では♂は両方のX染色体にイエローサイドが無いと発現しませんが、一方の♀は一つしかないX染色体にイエローサイドがあれば発現します。
なお、イエローサイドはオパーリンとも呼ばれているようです。
↑こちらがワキコガネのぽぽちゃん。とてもよくおしゃべりしますね。
シナモン
シナモンの特徴は全体的にノーマルが淡いカラーとなった感じです。
頭や背中もノーマルに比べると薄くくすんだような色あいです。
シナモンを発現する遺伝因子もワキコガネのイエローサイドと同様に性染色体潜性遺伝(性染色体劣性遺伝)です。この因子はメラニン色素を黒から明るい茶(シナモン色)に変化させる性質を持ちます。
シナモンはショップでは4~5万円で販売されているようです。
↑こちらがシナモンのホオミドリウロコインコ。こんな握り方をされても平気なよく馴れたコですね。
パイナップル
パイナップルの特徴はワキコガネとシナモンの特徴を合体させた感じで、全体的に色が薄くお腹の両脇は黄色です。そしてお腹や顔に赤い色が多く出るため、ワキコガネやシナモンよりも明るく派手な感じになります。
その特徴はワキコガネのイエローサイド因子とシナモンのシナモン因子の両方を持っていることで発現しています。
イエローサイド因子とシナモン因子はどちらも性染色体潜性遺伝で、X染色体上にあります。
これらは通常はX染色体上にどちらか一つしか乗らないのですが、クロスオーバーというまれ(10%~20%らしい)に発生する遺伝子の交錯によりX染色体上にイエローサイドとシナモンの両方が乗ったときのみ、パイナップルが誕生します。
そして伴性潜性遺伝の特徴上、♂(オス)は2つ両方のX染色体がイエローサイドとシナモン因子を保持していないとパイナップルを発現しないため、パイナップルの♂はかなり作出が難しい品種です。
なお、パイナップルの色合いにも個体差があり、赤色が特に多く出ているものはレッドパイナップルと呼ばれています。また、頬が赤いものはレッドチークパイナップルと呼ばれます。
パイナップルは5~6万円程度で販売されていますが、レッドパイナップルやレッドチークパイナップルはさらに高価なようです。
↑パイナップルのきィちゃん。カラフルですね。こちらのチャンネルでは沢山のウロコインコ動画があります。ウロコインコの種類の説明動画もありますのでそれさえみれば、このサイトは見る必要ないかも(笑)
ブルー(ターコイズ)
ブルーはその名の通り、体全体が青みがかった色をしています。クチバシや足は黒っぽい色をしています。
正式にはターコイズと呼ばれ、ターコイズ因子により黄色や赤い色が発現しないために体全体が青っぽい色になります。
ターコイズ因子は常染色体潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)です。
ブルーのホオミドリウロコインコは、ショップでは6万円前後で販売されているようです。
↑ターコイズのかぼすちゃん。深い青みがかった色がきれいです。
ブルーワキコガネ(ワキコガネブルー)
ブルーワキコガネは、ターコイズ因子とイエローサイド因子の両方が発現した色変わりです。
常染色体潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)であるターコイズ因子は2つ揃えば発現し、ノーマル(グリーン)の色から黄色と赤を薄くして青くなります。1つだけの場合は潜性なので発現せずにスピリットと呼ばれターコイズ因子を隠し持っているノーマルになります。
性染色体潜性遺伝のイエローサイド因子・シナモン因子が発現した個体に、ターコイズ因子が2つ揃えばワキコガネやシナモンとブルーが同時に発現します。
ブルーワキコガネはイエローサイド因子により、純粋なブルーより全体的に明るい色で、お腹まわりが黄色っぽくなります。顔に赤が残る点や、クチバシと脚の黒色も薄くなります。
↑こんぱまるさんのワキコガネブルーの紹介動画。純粋なブルーも登場して比較していますのでわかりやすいです。
ブルーシナモン(シナモンブルー)
ブルーシナモンはブルーワキコガネと同様に、ターコイズ因子とシナモン因子が同時に発現したものです。
シナモン因子により、ブルーが全体的に薄くなります。ブルーワキコガネよりさらに薄くなった感じで、赤や黄色は目立たなくなります。
↑こちらの動画にはブルーシナモンの結月ちゃんとブルーワキコガネの神無月ちゃんが登場します。比較すると色の違いがよくわかります。
ブルーパイナップル
ブルーワキコガネとブルーシナモンがいるということは、当然ブルーパイナップルも存在します。
ターコイズ因子と、イエローサイド因子・シナモン因子が同時に発現した場合がブルーパイナップルになりますが、当然かなりレアな色変わりです。
特徴としてはブルーシナモンをさらに薄くしたようなくすんだような色あいです。通常のパイナップルはかなり派手ですが、ブルーパイナップルは対称的に大人しい色合いに思えます。
↑インコ・オウム専門店「えとぴりか」さんご紹介のブルーパイナップル
成鳥の全体姿がわかる短い動画をみつけきれず。
ダイリュート
ダイリュートの特徴は全体的に明るい色で、非常に赤や黄色が強く出ていることです。
ダイリュート因子は常染色体潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)で、メラニン色素を薄める性質があります。それにより全体的にシナモンよりさらに明るい色になります。
↑こちらがダイリュートの水無月ちゃん。派手なお腹の赤と黄色、背中はライトグリーンです。
ダイリュートワキコガネ
ダイリュート因子もターコイズ因子と同様で、常染色体潜性遺伝なので2つ揃えば、イエローサイド因子・シナモン因子と重複して発現します。
ダイリュート因子とイエローサイド因子の両方が発現した色変わりが、ダイリュートワキコガネです。
特徴は純粋なダイリュートよりさらに黄色や赤色が強く出るようです。
↑こちらがダイリュートワキコガネ。確かに顔までかなり赤いですね。
ダイリュートシナモン
ダイリュート因子とシナモン因子の両方が発現したものがダイリュートシナモンです。
特徴はシナモンからさらにメラニン色素が薄くなるということになります。
↑こちらがダイリュートシナモンだと思われる「もえぎ」ちゃん。確かに背中はシナモンカラーが残っているように思えますが。(正直なところダイリュート系は私にはあまり区別がつきません)
サンチーク
サンチークは、ダイリュート因子が発現したパイナップルのことです。
よって、ダイリュート因子、イエローサイド因子、シナモン因子の3つが発現していることになりますので、かなりレアです。
なぜかダイリュートパイナップルとは呼ばずに、サンチークという名称がついています。
特徴は太陽のように赤く輝いている頬、お腹も全体的に赤く、背中はほぼ黄色に近いです。
↑こちらがサンチーク。なんとも派手な色合いですね。
ミント
ミントはダイリュート因子とブルー(ターコイズ因子)の両方が発現したものです。
よって、特徴はブルーの色のメラニン色素が薄まって、ミント色の羽になります。クチバシや脚も黒ではなく薄いグレーになります。尾羽も薄いグレーです。
ブルーシナモンとの見分けが難しいと思いますし、後述するミント系と見分けるのはかなり難しいです。
なお、ミントの価格は12~14万円程度はするのではないでしょうか。
↑こちらがミントのローザミントちゃん。ボール投げがお好きなようで。
ミントワキコガネ(ワキコガネミント)
ミントはダイリュート因子とターコイズ因子の両方が発現したものですが、これにイエローサイド因子も発現すると、ミントワキコガネになります。
特徴は遺伝的にはミントから黄色と赤を増加させたものになるはずですが、見た目上はあまりミントとの区別がつかないことから、ミントワキコガネとして販売されていることはほぼ無いようで、ミントとして販売されていることが多いと思われます。
ミント系を繁殖しているブリーダーさんからならば、正確なミントワキコガネを入手可能かと思われます。
↑こちらは海外の動画ですが、「opaline mint conure」として紹介されていますので、それが正しければミントワキコガネということになります。
2:00あたりから単体で映りますが、確かに黄色が濃いように思えます。
ミントシナモン
ダイリュート因子とターコイズ因子の両方が発現したものにシナモン因子も発現すると、ミントシナモンになります。
特徴はミントが少しシナモン色になったような。。。なかなか区別は難しいと思います。
↑ミントシナモンの動画はほとんど見当たらず、まずはヒナでしたらこちらではないでしょうか。(自信ありませんが)。前にいるお腹が黄色っぽいほうが次に説明するムーンチーク、もう一方がミントシナモンのように思いますが、違っている可能性もあります。
成鳥は次のムーンチークの動画に登場します。
ムーンチーク
ムーンチークは、ダイリュート因子とターコイズ因子の両方が発現したパイナップル(イエローサイド因子とシナモン因子が発現したもの)です。
なぜかミントパイナップルとは言わずに、ムーンチークという名前がついていますが、サンチークにしろムーンチークにしろ命名センスの良さに驚きます。
特徴は淡いミントカラーに顔やお腹が薄い赤(オレンジ)が入ります。
もしかするとミントワキコガネがムーンチークとして販売されていることもあるかもしれませんので、遺伝にこだわる人は注意しましょう。
↑こちらの動画はブリーダーさんの投稿によるもので、サンチーク、ムーンチーク、ミントシナモンが登場します。どれもすごくきれいですね。
ルチノー
ホオミドリウロコインコのルチノーはまだかなり希少性が高く、あまり出回っていないようです。
特徴は他のインコのルチノーと同様に、メラニン色素が欠損することで白・黄色・赤の色素だけが残ってカラフルな黄色と赤の体色をしています。
サンチークに似ていますが、ルチノーは目も赤いので、目を見ればすぐにわかります。
ルチノーは他のインコでは性染色体顕性遺伝(性染色体優性遺伝)なのですが、ウロコインコに関しては情報不足で未確認です。
おそらく数年たてばもっとメジャーになっていくのではないでしょうか。
↑こちらがルチノー。かなり派手です。
クリームイノ
ホオミドリインコのクリームイノは、ルチノーの黄色い体をクリーム色にした感じで、色合いとしてはコザクラインコのクリームイノに似ています。
遺伝的にもターコイズ(ブルー系)にルチノー因子が発現したものと思われます。
激レアのようでYouTube上で動画をみつけることができませんでした。
★動画募集しています。
↑動画がみつからないので、インスタグラムから発見したクリームイノを埋め込み共有させて頂いてます。
バイオレット
バイオレットはその名の通り、紫色が発現したものです。
バイオレット因子は常染色体顕性遺伝(常染色体優性遺伝)です。
バイオレット因子を1つもつとSF(シングルファクター)、2つもつとDF(ダブルファクター)といい、DFのほうが紫色が強く出ます。
また、バイオレット因子はこれまでに説明したイエローサイド・シナモンの性染色体潜性遺伝の因子やターコイズ・ダイリュートの常染色体潜性遺伝の因子とは因子が乗る染色体位置が異なるため、全ての組み合わせに対してバイオレットも組み合わさることができます。しかもSFとDFがありますので、たくさんのパターンがあります。
組み合わせによっては非常に美しい紫色の羽色を見ることができます。
↑こちらは海外の動画ですが、どうやら翻訳によると右から順に「ノーマルのバイオレットSF」「ノーマルのバイオレットDF」「ターコイズ(ブルー)」「ターコイズ(ブルー)バイオレットDF」らしいです。
最後に
今回はホオミドリウロコインコの色がわりをご紹介しました。
ご紹介したもの以外にもファローなどの新しい色変わりがでてきているようですが、情報が少ないため今回は省かせて頂きます。
さて、4回に渡りご紹介したウロコメキシコインコ属、いかがでしたか。
調べていく中でウロコメキシコインコ属の種類の多さ、ホオミドリウロコインコの色変わりの多さには驚きましたが、どの種類・色も独自の魅力があって、すばらしいインコだと思います。
もしもウロコメキシコインコ属のインコをご家族に向かえることを検討している方のご参考になれば幸いです。
それではまた。
(次の記事はこちら↓)
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